現在のわたしたちのニホンザル研究の大きな目的は、屋久島のヤクスギ林で、森林の更新に応じて、ニホンザルの個体数がどのように変化し、その社会がどのように移り変わっていくのかを明らかにすることです。1998年以降、調査を行っているわれわれの調査地は、伐採を受けていない国立公園内の原生林、伐採後スギを植林された場所、伐採後植林をせずに自然に更新した場所がモザイクに存在しています。これらの森林がどのように更新していくかをモニターしながら、ニホンザルの密度がどのように変化していくかを調べています。調査地の中では、5つのニホンザルの群れを識別しています。これらの群れの分布は長期にわたって安定しており、どの群れも出産率は変わらないことが分かっています。これは、小さい群れが出産率が次々に消滅し、群れの分布が大きく変化している、屋久島の海岸部と大きな違いです。
ほかにも、単独で行動しているニホンザルの数の変化を明らかにしたり、腸内細菌叢の研究のために試料採取に協力したり、さまざまな研究を展開しています。
また、1997年までは、屋久島のさまざまな場所でニホンザルの分布調査を行い、標高によるニホンザルの集団密度の違いを明らかにしたり、集落近くを含む、海岸部での生息数を推定したりしました。